今回は、高貴な人物の身だしなみを整えるのに一役買った、香枕について簡単に解説。
そもそも“香枕”って
なんぞや?
簡単に説明すると、髪の毛や寝室に香を焚き染めるために使う道具で、貴族や大名の婚礼道具にも取り入られていた。
近世の箱枕(竹や籐)を原型としているが、陶磁器製のものや籠型のものもある。

仕組みは、枕の内部に香炉を入れ、練香や香木を炊くことによって、上部や側面の透かし部分から、香が漂う仕組み。
余談ですが、枕と名前がついていても実際に頭を乗せて使う香枕は少なかった模様。

理由としては火気を用いるため危険である点や、細工が繊細になっていったことが挙げられます。
閑話休題。実際には枕元に置いて髪の毛だけを乗せたり、室内用の香炉として用いられることが主流だった。
漆工芸と香枕
漆工芸では、蒔絵や螺鈿が施された、美しい香枕が作られた。サントリー美術館所蔵の、「薄蝶螺鈿蒔絵香枕」が有名。

香枕と吉原遊廓
枕そのものを香木で作ったものも、同じく香枕と呼ばれていました。
別名は匂枕、伽羅枕、沈枕、吉原枕(後世に遊郭で流行したため)など。
特に遊郭で用いられた香枕は、身だしなみを整えるだけでなく、雰囲気づくりの小道具としても活躍しました。
季節の香枕

おぼつきなくも
菊枕
香枕にも、日本らしい四季をイメージしたものも存在する。
干した菊の花を枕に詰めた“菊枕”、端午の節句に菖蒲の葉を薄い紙で包んだ“菖蒲枕”も広い意味で香枕といえます。

これは薫り高く、生命力の強い植物にあやかって、就寝時の悪夢や病魔を払い、長命を願ったものだと考えられます。
ちなみに煎茶道具にも、香枕と呼ばれるものがあり、線香筒を置き飾る際に、もたせかけるもの。
またの名前を“香架”、“香筒架”とも。