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ハーブ解説 Part173

今回紹介するのは、現代でも活躍しているマラリアの薬の原料であるChinchonaことキニーネです。

Chinchona pubscens

読み方:シンコナ・パブスケンス

非耐寒性の常緑低木や香木10種が存在し、アンデス山脈の標高1500~2000mの斜面に自生しています。この品種はエクアドルが原産ですが、種を区別するのは非常に困難なため、専門家の中にはせいぜい20種類程度だと主張する意見もあります。

成長が早く、見た目の特徴として卵型の葉をつけ、小さな筒状花がライラックにに似た円錐花序に咲き、長さ2cm程の蒴果が実ります。

シンコナの栽培は17世紀以降世界的に重要なことで、現在では熱帯地域で栽培され、8000~10000tのシンコナの皮から400~500tのアルカロイドが生産されています。

各種利用法

料理

苦味があるのが特徴で、トニックウォーターや炭酸水に苦味料として添加されています。

薬用

苦味のある収斂性のハーブで、解熱、鎮痙、抗マラリア作用があります。また、心臓の鼓動を遅くする作用があり、内服では神経痛や筋肉の痙攣、マラリアに利用され、風邪薬やインフルエンザの特許成分となっています。また、喉の痛みのうがい薬にも用いられています。さらに他の利用され方として、病後回復期の同種療法に使用されることがあるようです。

キニン

ベンゼン環とピリジン環が結合したキノリンアルカロイドの一種で、この植物から単離抽出されました。主に不整脈、動機や細動といった心疾患に処方される薬です。これは心筋の興奮、刺激の伝導、心拍抑制や収縮性を抑制するためです。副作用として耳鳴り(シンコナ中毒)、めまい、異常な出血や打撲などを引き起こします。

余談ですが、サンショウ科の植物から単離抽出されたキノリンアルカロイドは、細胞毒性と抗血小板作用があることが判明しました。

過剰摂取は頭痛、発疹、難聴、視力障害を引き起こします。また、マラリアに罹っていない限り妊婦への使用は禁忌です。このことから国によっては法規制の対象となり、キニーネに加工されたものは特に厳しいようです。

栽培

栽培品種で非耐寒性です。日向、半日陰の水はけの良い湿った高湿度の土地を好み、最低気温は15~18℃を維持しましょう。繁殖は気温が15~18℃の頃に挿し木を行います。管理は冬の終わりに丈夫な枝を出させるために、短く切り詰めます。収穫は樹皮を5月から9月にかけて剥ぎ取り、乾燥させたものを成分抽出液、錠剤、チンキ、粉末に加工します。

歴史

シンコナの名前は、ペルー総督の妻であるチンコン伯爵夫人がマラリアに罹った時の発作がこの植物を投与したことで一段落したためと言われていましたが、現在ではこの説は歴史家によって覆されています。

しかし、1630年代頃リマにいたジェズィット会士(現代のイエズス会)たちがこの薬をよく知っていたため、「ジェズィット・バーク」と呼ばれていました。この名前はヘアマン・ファン・デル・ハイデンの医学論文、『腹痛と草本についての評論』で初めて言及されました。

19世紀頃、オランダとイギリスの間でシンコナ農園開墾の競争が起こり、その影響で野生のシンコナが激減してしまいました。そしてオランダがジャワ島でのシンコナ栽培に成功し、世界のキニーネ供給の中心となりました。

現在では抗マラリア薬はほとんどが合成薬に取って代わられてしまいましたが、最近では合成薬に耐性を持つマラリアが登場し、アルテミシアなどの重要性が見直され、さらに他のアルカロイドキニダインという成分が心機能の調整に役立つとして注目が集まっています。

あとがき

今回はシンコナについて解説しました。

同じものが同じものを治す。という自身の理論を信じて自分自身を実験台にするという普通では怖くて出来ないことを行い、そこで法則を見出したハーネマン博士は本当に偉大だと思います。

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今日まで書き続けることができたのは読んでくださっている人のおかげです。本当にありがとうございます。拙い記事ではありますがこれからも書き続けていこうと思うので、どうか応援して下さると大変嬉しく思います。

今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。

参考文献リスト

・ハーブのすべてが分かる辞典 ナツメ社 ジャパンハーブソサエティー
・ハーブの歴史百科 原書房 キャロライン・ホームズ
・ハーブの歴史 原書房 ゲイリー・アレン
・ハーバリストのための薬用科学 フレグランス・ジャーナル社 アンドリュー・ペンゲリー
・ハーブティー辞典 池田書店 佐々木薫
・ハーブ大全 小学館 リチャードメイビー
・ハーブ大百科 デニ・バウン 誠文堂新光社

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